みずいぼ(伝染性軟属腫)・・・取ってもまたでてくるしつこいやつ

和尚:今回は私の昔話からはじめさせていただきます。私が小学生の頃、といっても「今は昔」のレベルですが、「水イボ」つまり今回のテーマである伝染性軟属腫が背中や腹にできました。当時の担任の先生がイボを取らないとプールには入れないということで、私は母に連れられて近所のお医者さんに行きました。そのお医者さんは元軍医さんでなかなかの名医という噂であり、背筋を伸ばされ、きびきびした雰囲気は「さすが元軍医」という感じでした。

院長:第二次世界大戦末期には医者はみんな軍医として徴兵されたと聞きますが・・・。

和尚:それで、診察の時にその先生が少し居住まいを正して、私の目を見て、言うのです。
「君は日本男児だね?」
意味がよくわからなかったのですが、
「はい。」
と答えると、
「では、このくらいのことで泣いてはいけないよ。」
といわれて、次の瞬間、ピンセットのようなもので、イボを全てつまんで取られました。
先生の雰囲気に押されて、痛みをこらえて、泣かなかったのは、今も印象に残る思い出になっています。
そこで、聞きたいのですが、今も水イボの治療はこんな感じなのでしょうか?

院長:そうですね。基本的には物理的にイボの部分を除去することが治療の基本的な発想になります。ピンセットで摘んでとるのが、安全かつ迅速で私はもっとも良いかと考えます。しかし、硝酸銀という腐食性の薬品を塗って、時間をかけて焼く治療をする先生もおられます。この治療のメリットはあまり痛くないことですが、治療を受けるのが小さい子供なのでこすってしまって正常の皮膚を焼いてしまう危険性があります。

和尚:大人だと薬を塗ってしばらく触らないということができますが、子供では確かに難しいですね。

院長:このイボは伝染性軟属種ウイルスが皮膚の細胞に感染して起こるできものです。実際の感染は、つぶれたイボに接触する事で起こりますので、裸での接触が頻繁に起こるプールなどで感染が起きやすいのです。そして、子供の皮膚の免疫は弱いので、繰り返し感染を起こして何度も水イボができることになります。しかし、小学校の高学年くらいになると皮膚の免疫は大人に近くなるのでほとんどできなくなります。

和尚:私もあのときにイボができていることが見つからずに、小学校高学年になっていれば治っていたのですか?

院長:理論的にはそうですが、イボの数が増えて大変なことになっていたと思います。色々な先生の意見があるのですが、水イボを取らない先生もおられます。しかし、その後、水イボの数が増えた患者さんが、我々皮膚科のところに受診されることがしばしばあります。ですので、私はいぼの数が少ない間に取ることを患者さんにおすすめしています。

和尚:イボがあるとプールにはいれないのもつらいですね。

院長:担任の先生にもよりますが、感染予防の観点からは除去しておいた方がいいでしょうね。
私は、水イボをみつけたら、早めに皮膚科を受診してとってもらうことをおすすめします。

和尚:水いぼの兄弟がいる場合、入浴時にバスタオルの共用すると感染するでしょうか?

院長:感染する危険はあります。先ほども言ったように潰れたいぼから感染するのでタオルにいぼのウイルスがついて、感染していきます。現実的にはなかなか難しいかもしれませんがバスタオルは別々にした方が無難でしょう。しかし、そこまで言うと一緒に遊ぶことですら接触しますので危険があるのですが・・・。やはり兄弟の場合は現実問題難しいですね。